人生初の入院生活①

その日、バイクで通勤中、背負ったバックパックと接する背中に、何とも言えぬ違和感がありました。

痛いわけではないのですが、いつもよりバックパックが重く感じるのです。

重く感じるものの、バイクに乗っている時間は15分ほどなので、さほど気にせず職場へ到着しました。

 

午前の診療は特に問題なく終え、午後の診療が始まって30分ほど経って洗濯物を干している途中で、胸に違和感を感じ呼吸がしづらくなってきました。

違和感は時間と共に、胸を鷲掴みにするような痛みへと変わり、その後も痛みが継続し、とても立っていられない状態だったので、とりあえず予約の患者さんをキャンセルしてもらい、しばらく横になっていました。

1時間ほど経って、ようやく症状が落ち着いたので、仕事の帰りに内科を受診して心電図をとってもらいましたが、特に問題はないとのこと。

念のため、ニトロペンだけ処方してもらい、帰宅しました。

 

次の日の朝、風呂に入って頭を洗っている途中でまたもや昨日の胸の痛みが起こり、まだ洗髪の途中でしたが適当に流して、這って風呂場から出てきました。

急いでニトロペンを舌下に放り込むと、何とか5〜10分ほどで発作はおさまりましたので、そのまま職場へ向かい、仕事中は特に問題なく過ごせたのですが、帰宅して風呂に入ってる途中、またもや発作が起こりました。

 

これだけ連日に渡り発作が起こるのは流石におかしいと思い、内科で紹介状を書いてもらって大学病院を受診することにしました。

紹介状をもらった足でそのまま大学病院を受診し、待ってる間にも発作が起こり胸が痛くなってきた頃に僕の名前が呼ばれたのですが、発作が起こってることをドクターに伝えると、そのまますぐに処置室で心電図をとってもらい、レントゲンを撮影したあとPCR検査をうけ、陰性であることを確認すると、そのままオペ室へ直行。

そしてカテーテル検査。

検査といっても、右手首に局部麻酔をして、そこの血管からカテーテルを心臓まで通すので、ほぼ手術じゃないの!? という感じですが、その検査で血管の詰まったところがわかったところで、そこへステントを留置してバルーンで拡張することが手術という認識のようです。

病名は心筋梗塞。

処置中は、何となく胸の辺りをカテーテルが通るのを感じたりするくらいで、痛みを感じたりすることはありません。

時間にして小一時間という感じです。

その時の僕の感情は、こんなに迅速に対処していただいて感謝しかありませんよ、という気持ちでした。

そして、もうあの不快な苦しみから解放されるのだという安堵感。

 

手術の後はCCUという集中治療室で、看護師さんたちに見守られながら一晩を明かします。

 

点滴を入れたり、検査で血液を採取するためのルートをとるのですが、簡単にいうと細いチューブ状の針を腕に刺すわけです。

大学病院は研修施設でありますので、若い先生、看護師さんがそれをするので、まぁ、失敗するわけです。

それぞれ4回ずつくらい。

最初は「僕も歯科医師になったばかりの頃は、そうやって勉強させてもらったので我慢」するのですが、さすがに3回を超えてくると、「ベテランさんに代わったほうがいいんじゃないですか」という心の声が喉をついて出てきそうになりました。

まぁ、4〜5回目でようやく成功し、今度は導尿(トイレに行けないので、おしっこをするところにチューブを入れる)で、また上手く行かず・・・

ただただ忍耐です。

結局、導尿はうまくいかず、コンドーム形のカテーテルを性器に被せて、おしっこを排出させることになりました。

CCUでは、僕の世話を看護師さんがしてくださるのですが、それはそれで苦しいというか、自分の意志で動けないということは苦痛でもあります。

何もできない状態で12時間ほどベッドの上での過ごすので、ぶっちゃけ暇ですが、仕方ありません。
ただただ時計を見つめ、朝を迎えるのを待っていました。

 

眠れたのかどうかもわかりませんが、何とか朝を迎えました。

 

CCUから一般病棟に移れるかどうかは、75m歩行というテストによって判断されます。

病室からトイレまでの距離を自分でできるかというテストです。

問題なく75mを歩けましたので、一般病棟へと移ることになりました。

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