心、削られて

妻が乳がんを患ってから、病院の受診は、できる限り僕も一緒に行くようにしました。

妻は、よく言えば「和を尊ぶ」人で、本心を抑えがちなところがあります。
ゆえに、妻を一人で受診させると、先生に遠慮してか、聞きにくいのか、肝心なことを質問せずに帰ってくることがあるのです。

彼女自身のカラダのことではありますが、病のことでありますので、知れば知るほど怖くなる気持ちもわかります。

その点で言えば、僕はズケズケ言う性格(自分なりに遠慮してるつもりなのですが)ですし、妻のこととはいえ、まだ客観的に捉えることができますので、妻が質問しづらそうにしてることは、僕が聞くことにしてるのです。

膠原病内科は予約時間に行っても、30分待ちということはよくあることなのですが、この日は60分ほども待ちました。

朝一で尿と血液の検査をするので9時前には病院へ行き、11時の受診予約が12時近くになり、そこから病院会計が20分ほどかかり、処方箋薬局で薬を出してもらえるまで更に1時間・・・

昼食をとるタイミングも逃し、帰宅したのは3時頃になっていました。

僕は2年前くらいから、いろいろ考えすぎたり、疲れたりすると、呼吸困難に陥ってパニック発作を起こすことがあるのですが、こういう場合は呼吸が浅くなってることが多く、対処法として、大きくため息をつくようにしていました。

この日も帰宅した時に、空腹やイライラから発作が起こりそうになったので、大きくため息をつきました。

妻は、自分のせいでイライラさせてると感じたのでしょう。悲しそうにしていました。

「ごめんごめん、発作が起こりそうやねん」

そう言ってあげればよかったのですが、この時の僕には、その余裕もありませんでした。

妻のサポートについて、煩わしいと思ったこともありませんし、夫婦として当たり前だと思っていましたが、長期にわたる仕事と家事と妻の心配で、知らず知らずに僕の心も削られていたのかも知れません。

 

それからしばらく経ったある日、妻と長女と3人でテレビ番組を観ていた時のことです。

僕と長女が番組について話をしているところに、妻が会話に入ってきたのですが、会話の流れから全くズレたことを言うのです。

「? なにそれ、全然いまの話と関係ないがな」と僕が言いますと、

「あぁ、そうですか」と妻。

この頃から、何か、不自然というか、違和感というか、、、そんなものを妻に感じはじめていました。

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