妻の闘いの始まり

2020年11月某日の午前8時ごろ、妻は右側乳房切除全摘出および広背筋皮弁法による乳房再建のため、手術室へ向かうエレベーターに乗り込みました。

この時、とても妻を愛おしい気持ちで見送ったことを記憶しています。なぜだが、妻と出会った大学生時代のことや、友人同士のボーリング大会でペアになって優勝したこと、付き合い始めた冬に二人でクルマで福井に行ったら、午後から大雪になって帰ってくるのに7時間以上かかったことなど思い出していました。

手術が終わったという看護師さんからの知らせは16時を過ぎた頃で、妻が病室を出てから8時間もの時間が経っていました。

乳腺内分泌外科の先生からの手術報告として、センチネルリンパ節転移は微少で問題なく、リンパ節郭清は必要なかったため、今後の治療としては放射線治療も抗がん剤による治療も必要なく、ホルモン療法のみで良いとのこと。

形成外科の先生からの手術報告としては、広背筋皮弁にて再建した乳房は徐々に収縮してくることを考えて、健常側の左乳房よりも少し大きめに再建してますとのこと。

先生方には、感謝の念しかありません。

しばらくして病室にベッドで運ばれ戻ってきた妻は、目を瞑り苦しそうにしていました。

やはり全身麻酔からの覚醒は苦しいようです。

ずっと妻のそばについていてあげたかったのですが、コロナ禍のため、顔を見たらすぐに退室を求められました。

あとは、傷の消毒やリハビリなどしながら体力回復をしていけば良いだけ・・・のはずでしたが、現在も続く妻の闘病の始まりにすぎなかったのだと、この時、我々夫婦は知る由もありませんでした。

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